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――サッカーを一生懸命に頑張っている姿を見て三宅くんのことが好きになりました。いつも応援しています。――
陽夏が持ってきていた明るいヒマワリ模様のレターセット。自分では選ばないような便箋にその手紙を書いた。
こんなの、どうして自分で書かないの?
「陽夏が自分で書いたら良いのに。何で書かないの?」
「えー?だって恥ずかしいじゃん。ありがと、これで良いよ。あと、名前も書いて。“浜本陽夏”って。」
陽夏は屈託なくそう言って笑うけれど。私の気持ちを知ってるの?サッカーをする三宅くんが好きなのも、いつも応援しているのも私の本当の気持ちなのに…。
「え。陽夏が清書をするんじゃないの?」
「えー、やだ。由奈の方が字が綺麗なんだもん。これでいいよ。」
嫌なのは私の方なのに。だけど、言われるがままに陽夏の名前を書く自分がいた。だってトモダチだから……。
陽夏と張り合ったって敵わない。同性から見ても陽夏はかわいい。パッチリした目にスッと通った鼻筋。何もかもがバランス良く配置された陽夏の顔を羨ましく見てしまう。
小さすぎる目に低い鼻。自分の顔のパーツのどれもこれも気に入らない。スタイルだってまるで敵わない。
だけど、それだけで負けが決まっている訳じゃない。私には告白する勇気もない。陽夏のように他人に代筆させる図々しさもない。
強く握ったペンの先は少し震えた。“浜本陽夏”、書き慣れない名前を手紙の最後に記した。
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