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この局には他にもたくさんの秘密の通路があるので洞江がそこから脱出したのかさだかではないがうまくすれば洞江に遭遇できる わたしはそれにかけた 洞江にあいたい それも今日の洞江に会いたいのである 洞江に合えば何かの突破口が開ける そんな気がしてならなかった そして私はその出口の近くの陸橋にいる洞江をついに見つけた しかし洞江に近づこうとするとその足は止まった 洞江が私を相手にしてくれるだろうか 洞江はけして気さくな男ではない 自分が興味のある人間には気安く話かけるが自分にとって興味のない人間には口をひらこうともしない それがどんな著名人でもである まして時の人であった洞江と連ドラの主役の経験のない俳優の私では格が違いすぎる 挨拶ぐらいできても その後会話にもっていく自信が私にはなかった まして今日の洞江が気が立っていることは容易に想像できた 私はしばらく躊躇していた 軽くあしらわれて傷つくのが嫌だったし 洞江との会話がそれほど価値のあるものかと言う確信もなかった しかしそれは自分に対するいいわけであり本当は勇気がでなかったのである 私は陸橋の上にいる洞江をただぼうと見ているだけだった
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