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先生の本で吹き替えは通用しないと 監督は言った でもフアーロングとリンダハミルトンの吹き替えほめてたぞ 自分の本は別ってやつか お前と話しても埒あかない  ジャーマネ呼べ アクターは渋々マネージャーを呼んだ マネージャーが拝むように入ってきた 監督勘弁してください あの人怒らすとお役所<あの放送局>がうるさいんです 監督は言った ちょっとお前こっちに来い 監督は入ってきたマネージャーを部屋の外に連れ出した  私はその時茫然としていた それだけの理由があったからだ 私とそりが合わないアクター達が固まってひそひそばなしをしていた ときどき私の方を盗み見た 私はそれに気づかぬふりをしていた いやそれどころかその態度を不快に思う余裕さえなかった 怪談師などならなければよかったと本気で思った 私はどこかで怪談師をなめていたのかもしれない 深い後悔が私をおそった 怪談師になったものはそれなり洗礼を受けるとは聞いていたが 聞くのと体験するのでは随分違う 大物の先駆者達は良くこんな洗礼を受けながら語り部を続けられるものだとあらためて彼らに畏敬の念を感じざるえなかった  それでも仕事に選んだ限り逃げるわけには行かず私は気持ちを落ち着かせた 
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