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「なに?!」
突然湧き上がった水蒸気を目にし、夏澄が叫んだ。
青年が反応した。
「水の結界っ」
はっとして、夏澄とグランが青年を見た。その時、声が響いた。
「グランさん、これに穴を開けて!」
「妙子さん?!」
『妙子っ!』
水の結界の中から響いてきた声は、妙子のものだった。青年の中で八王子が叫ぶ。
夏澄が結界の中を見ようと目を凝らした。
水蒸気の幕の白さが、少しずつ薄れ始めている。徐々に見え始めたその内側で、少女がアレの両頬を両手で包むように押さえているのが、ぼんやりとわかった。青い着物姿に変わっている。
その足元に、もう一人。
アレの両手首を掴んで、アレの動きを封じている人物。少女と似た雰囲気の、もう一人の少女。制服姿の"妙子"。
いつの間にか、少女と妙子が入れ替わっていた。
妙子が再び叫んだ。
「早くっ!!」
グランは我に返ると地面に手をつき、一気に妙子へ向かって意識を集中した。妙子の気配がはっきりと感じられる。
「いきます」
グランの手元から、何かが鋭く放出された気配が発せられるや、水の結界が大きく震えた。八王子と少女を包んだアレの結界を破ろうとした時よりも、さらに多くの蔓が、一斉に突き刺さった。突き刺さり損ねた蔓が、近くにいた妖しを突き通し消した。
「グラン」
その凄まじさに、夏澄は思わずグランを見た。
グランの顔が歪んだ。額に汗が浮かぶ。
(水の結界・・・強い)
この結界内で風と火が暴れたら、中のものはひとたまりもないだろう、と漠然と感じた。さすがのアレも、身が持つまい。
だが、気になることもあった。
(それでも、妙子さんは選んだ・・・)
グランは再び力を放った。
鋭く尖った蔓が、水の結界に突き立った。
青年と夏澄はそれを見逃さなかった。二人の両手から、それぞれ風と炎の渦が湧き起こる。
結界に突き立った蔓が、穴に深く刺さっていく。
風と炎の大きさが、急速に膨れ上がった。二人が限界まで力を高めた。
そして。
「いけーぇ!」
二人同時に、水の結界に突き刺さった蔓を目がけ、力を解き放った。
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