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生まれて初めて自分だけで外に出た私は、全速力で神社の方向に駆けていた。
ママと一緒の時は真っ赤な鳥居の外までしかきたことがないけれど、神社には神様の眷属がいるってママから聞いたことがある。
だから、もしかしたら私の願いも叶えてくれるかもしれない。その一心で、ママたちの目を盗んで家から逃げ出してきたの。
ママに見つかる前にお願いを聞いてもらわなくちゃ。早く早く。
人っ子一人いない真っ暗な神社の鳥居をくぐり、石段を駆け上がる。
石段の上には、石の道の先に小さなお屋敷のようなもの、それから、お屋敷を守るように犬の石像が二つ立っていた。
あのお屋敷の中に神様がすんでいるのかな?
初めて見たけれど、あのお屋敷からは神聖な雰囲気を感じるし、きっとそうだよね。
「君みたいな子がくるなんて珍しいね。
ママやパパはどうしたの?」
「ママもパパもいなくても、私一人だけで平気なの。ママたちは勝手に外に出ちゃダメだって子ども扱いするけど、もう私は子どもじゃないのよ。色んなことを知ってるんだから」
お屋敷の前で立ちすくんでいると、二つの犬の石像のうちの一つが私に話しかけてきた。
おすましして犬の石像に返事をすると、ふぅんと石像は興味なさそうに相づちをうつ。
「それで、こんな時間に何の用なの?」
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