3人が本棚に入れています
本棚に追加
「私ね、ここじゃないどこか遠くに行きたいの。ママもパパもいない、ずっと遠くに」
神様の眷属の質問に、はっきりと自分の目的を告げる。
「どうして?ママとパパが嫌いなの?」
「ううん、ママもパパも大好きだよ。
でもね、毎日同じことの繰り返しには飽きちゃったの。もっと色んなところを見て、色んなことが知りたい」
おうちにはおいしいごはんもあるし、優しいママもパパも、それからいつも一緒に遊んでくれるおねえちゃんもいる。安心して眠ることのできる私のベッドもあるし、おうちには何も不満なんてない。
でもね、ずっと思ってたんだ。
ここじゃないもっと遠くの国や時代に行って、冒険してみたいなぁって。
「その願い叶えてあげられなくもないけど、本当にいいの?ママとパパに会えなくなっちゃうんだよ」
「冒険が終わったら、元のおうちに戻れないの?」
もう会えなくなるなんて、考えてもみなかった。
少し不安になってそう聞いてみると、石像は表情ひとつ変えなかったけど、どこか楽しそうにクスクス笑いだした。
「さあ、どうかなぁ。
そんなに上手くいくといいけどね。
もう会えなくてもいいって覚悟があるなら、君の願いを叶えてあげるよ。どうする?
僕はどっちでもいいよ」
ママたち、あの子がいなくなったって今頃大騒ぎしてるかな。
もし心配かけてたらごめんなさいだし、ママたちに会えなくなるなんて嫌。でも、......。
「どうしても冒険がしてみたいの。
だから、.......」
会えなくなるのは嫌。
だけど、冒険はしてみたい。
二つの気持ちが同じくらいあってまだ迷っていたけれど、自分の気持ちを奮い立たせるようにそう口にする。
「そう、分かった。
いってらっしゃい、また会えたら会おうね」
私が最後まで言い終わる前に、二つの犬の石像が光り出し、私の体が宙に浮かび上がる。
わわっ.......。
ふわりと宙に浮いたまま、どんどん上へ上へと浮かび上がり、お空に近づいていく。
うわぁ、すごいすごい......。
どこに行くんだろう。
さっきまでの不安な気持ちなんてどこかに飛んでいってしまうくらいに、初めての空からの景色は特別でドキドキするものだった。
足を動かさなくても勝手に体が動いていき、どこに行くんだろうと思っていると、急に目の前が真っ白になって、今度はぐんぐんと地面の方へと落ちていく。
…….え!?わー!!!
なになに?死んじゃうよー!!
ママ、助けて!!
最初のコメントを投稿しよう!