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それから、どのくらい走ったのか分からないけど、同じところを何度もグルグル回りながら走り回っていると、遠くの方から私を呼ぶママの声が聞こえてきた。
「......チョコ〜!!チョコ、どこにいるの?」
ママだ!ママの声だ!
四本の足がちぎれそうなくらいに必死で走り、ママの声が聞こえる方に全速力で駆けていく。
大声で私の名前を呼ぶママを見つけた瞬間、地面を大きく蹴り、ママの胸の中に飛び込む。
「チョコ......!無事で良かった......」
ママ、ママ、勝手にいなくなったりしてごめんなさい。探してくれてありがとう。
私をしっかりと抱きしめるママの腕の中で、茶色のしっぽをブンブン振る。
ママの腕の中が、一番あったかくて安心する。安心したらなんだか眠くなってきちゃった......。
ママの腕の中でうとうとしながらも、そういえばとても遠いところに来たはずなのにどうやってママは私を見つけたんだろう、とふと不思議に思う。
ママも神さまにお願いしたのかな?
そんなことを考えていると、頭の中にさっきの神社にいた犬の石像の声が響いた。
(違う、違う。
さっきのところは、君の家の近くのテーマパークだよ)
え、ええ!?
それじゃあ、結局家の近くでウロウロしてただけってこと?
(そうだよ。
大体地方の神社の神様の一眷属にしか過ぎない僕には、遠くに君を送ってあげられるほどの霊力がないからね)
そんな......。
じゃあ、なんでもう二度とママに会えないかもしれないなんて脅すようなこと言ったの?
(その方が冒険気分を味わえるんじゃない?
どうだった?初めての小さな大冒険は?)
ワクワクして、ドキドキして、でもこわくて、さみしくて、ママに会いたくなった!
(そう、たくさんのことが勉強できて良かったね)
冒険もいいけど、やっぱりママの近くが一番。
ママの腕の中でぼんやりとそんなことを考えながら、やがて私は夢の世界に落ちていった。
おしまい。
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