彼女の事情

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彼女の事情

 最近の私は、ついてない。  まず、こないだ職場でたまたまとった電話が苦情だったこと。担当部署を案内しても応じてもらえず、しかも、こっちに非があるならまだしもという内容。約一時間、こってり怒鳴られた。  それから、やっと行けた気になるカフェが、ちがうお店になっていたこと。SNS(更新頻度は低い)やグルメサイトを事前にチェックしたときも、閉店したなんて記載はなかった。なにかと切羽つまっていたのかもしれないけど、せめてアカウントを消すとかしてもらえれば。乗り換え四回、まったく知らない土地への片道一時間半の道のりはつらいものがあった。  ついでに、店頭完売だった夏セールのワンピースをオンラインで発見し、大歓喜で注文したら不良品だったことも。在庫もなく交換不可で、返品オンリー。とことん縁がなかったのだろうが、問い合わせや返送はなかなか手間だった。  あとは、雨の日に駅の階段で前にいた人の傘の先端が脇腹にあたり、お気にいりのジャケットにシミができたこと。クリーニング店で追加料金を払ったものの、ただの泥汚れじゃなかったらしくまっさらにはならなかった。傘の横持ちやななめ持ちは、あらゆる意味で危険だ。  そのほか、電車に乗れば隣に座った酔っぱらいに枕がわりにされたり、スーパーで買った卵はぶつけた覚えもないのに死角にヒビがはいっていたり。  そして、なんといっても今回の件。妹との旅行がキャンセルになったこと、だ。  名の知れた旅行会社だったし確認時も問題なかったから安心していたら、いざ送られてきたチケットでは交通手段もホテルも希望したものより高いものが手配されていたのだ。  が、時すでに遅し。ほかに空きもなく、おまけに人数限定のオプションも入力もれで定員オーバー。しかも完全にあちらのミスにもかかわらず、差額を負担しろとまで要求される始末。  挙げ句の果て、旅行会社の担当者には「いまさらどうにもできないんですから、現状で最大限楽しむ方向に考えをシフトするとか建設的なことできませんか」と開き直られるわ、妹には「差額なんて絶対払わない。全部お姉ちゃんの責任なんだから、お姉ちゃんがなんとかして!」とブチギレられるわで板挟み。  最終的には交渉決裂でキャンセルとなり、私は見事『クレーマー客』と『無能の姉』の評価をいただくことになった次第なのである。  ――と、そんなわけで空白になった連休をもてあましているのがリアルタイムです。  こんなときにかぎって、知り合いたちとも予定があわず。そのうえ頼みの綱、隣県の実家在住の妹はあっさり気持ちを切りかえて、大学の友達とあらためて旅行にいってしまった。  つまり、とり残されてひとりぼっち、なのである。
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