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「……ん」
淡く入り込んだ光に気が付き薄っすら目を開けると隣に群司さんはいなかった。
(……また私を起こさずに行っちゃったのか)
軋む体を起こしてリビングに向かうとテーブルの上にはいつも通り置手紙があった。
【夕飯ご馳走様でした。とても美味しかった。残ったおかずは弁当として持って行きます。ゆっくり休んで下さい 群司】
(群司さん……)
結婚してからこういう日が続いていた。
夜遅く帰って来る群司さんは私を激しく求め、そしてそのまま眠っている私を起こさずに朝早くに出勤する。
夕飯は大抵朝ご飯になって、残ったおかずを自分でお弁当箱に詰めて昼食用に持って行く。おまけに洗い物まで済ませてくれている。
仕事のある日はいつもこうだった。
(私、奥さんらしいこと全然していない)
なまじ群司さんが優し過ぎるから余計にこの環境の生温さに不安になった。
(もっと群司さんに奥さんらしいこと、したいなぁ)
そんな漠然とした想いが私の中に降り積もって行く。
もっと群司さんが幸せだと感じてくれる事。
私と結婚してよかったと思ってくれる事。
そんなのを感じてくれるような何かが出来ないかなと考える私だった。
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