かくれんぼ

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 先生がニンマリ笑う。私は目を瞑って顔を上にあげた。まあでも先生が鬼になってくれてるだけマシかな。私はクラスの皆にいじめられてる。いじめてくる女子や男子が鬼だったら、無視されて誰も見つけてくれようとしないに違いない。 「よし、じゃあ数えるぞ、1、2、3、4、」  先生がグラウンドの横に生えている大きな樹木。少し黄色く色づいた葉をしている木の幹にもたれ掛かって目を腕で隠しながら大声で叫ぶ。 「5、6、7、8」  私は何処に隠れようか迷ってあたふたする。何人かがプールの方へ駆けていった。校舎の裏側へ行く子たちもいる。私は一人で体育館の後ろに回っていった。体育館の後ろは雑草が生い茂っていて、道路と学校に敷地を隔てるフェンスが立てられていた。隠れられそうなところが見つからない。私は場所を変えようと思った。すると足元に体育館の床下換気口があるのが分かった。何の気なしに触ってみるとカタリと鉄柵が外れた。頭から中を覗き込んでみると真っ暗でなんだか怖い。 「50、よーし探すぞ」  先生の声が聞こえる。私は臆しながらも換気口の中に入っていった。体育館の下は想像よりも広かった。這って歩く事くらいは容易そうだ。中はひんやり涼しくて、半袖の体育着だった私の腕は鳥肌が立った。湿っぽい冷たい土が膝に付く。四つん這いで中へと進むと、ギターやドラムの音が聞こえた。何処かのクラスが演奏している音がここまで聞こえてきたのだろうか。私は音楽に耳を傾けながら、ドンドンと奥に進んだ。
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