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 ケイは泣きじゃくりながら耳をふさいで地面につっ伏せた。  山中の岩や樹々、枯葉でさえも、すべてがケイを責めているようだった。斜面からケイの顔に泥水が滴ってきたが、ケイは頭を抱えて震えることしか出来なかった。  ただ耳鳴りから逃れたい一心で、ケイはレイの名を叫び続けた。  どれぐらい叫んだのか、雨脚が衰え閃光が瞬かなくなったころ変化があった。  耳鳴りは耳慣れた声に変わった。  ――ケイちゃん、行先も告げずに突然家から飛び出して行くのはやめてっていつも言ってるでしょ!  お母さんの声だった。   ――うちのウリ坊は今日も弾かれたようにどこまで行ってたのかな?  ――お父さん、それを言うならオームよ、この子は。走り出したら止まらないんだから。  お父さんとお母さんの普段のやりとりも聞こえてきた。  ――ケイには何を言っても無駄なんだ。  レイの鼻に付く呆れかえった声も聞こえてきた。 「だっでぇ、ぜんぶっ、ぜんぶっ、一緒にいたかったからなんだもん」  ケイは叫びながら立ち上がった。  もはやどっちが山頂なのか麓なのかわからなかった。ただ目の前に濁流が流れている、ケイに分かったのはそれだけだった。  ケイは震える足で濁流の淵に立った。流れは意思を宿した生き物のように形を変え、今にもケイの足を引きずり込もうとしていた。 「風の神様、ケイ、五つ葉のクローバーは持ってません。でもお願いです。レイくんを助けてください。そしたらケイ、湖の底でだっていいです。降り積もった落ち葉の中でだっていいです。引っ越し先がどこになったっていいです。レイくんが無事なら、なんだっていいです。何処かで遇ってもぜんぜんレイくんに気付けなくってもいいです。でもどうしても近くにはいたいんです。お願いです。ケイの願いを、聞いてください!」
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