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 その後、どうやって下山したのかは覚えていない。  それから1週間後、今暮らしている横浜に引っ越した。  そこは中華街や横浜の象徴であるみなとみらいのような高層ビル群が建ち並ぶ街なんかではない。まだ至る所に畑や雑木林が点在し、最近はさすがに見かけなくなったがタヌキがたまに道を横切っていたりする横浜とはおくびにも言えそうもない町だった。  そんな町で暮らしていた所為かよくケイのことを思い出した。溢れる自然がケイの笑顔を紡いでしまう。  会いたい。小学生の頃、よくそう思った。  もちろん当時、ケイに会いに行きたいと随分と両親に駄々を捏ねたものだ。  けれど両親の話ではケイの家族とは忽然連絡が取れなくなってしまい、会わせたくても連れて行ってやることが出来ないと説明された。どうしようもないと言われた。  野球を始めたのはそんな時だった。
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