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 マリヤは母親がカナダ人で所謂ハーフだった。  部活のない日はボクシングジムに通うアクティブな性格。そこで鍛えたがっちりした肩とハーフらしく170センチを超える長身が、野球をするには160センチしかない華奢な体つきの景子に比べればよっぽど投手らしい体躯をしている。  投球練習が終わると、キャッチャーの津田真介が駆け寄って来た。 「練習試合だし、景子ちゃん気楽にね」それだけ言って真介はキャッチャーズボックスに戻って行った。  春休みの練習試合だった。景子は空を仰いだ。はぁ、やっぱり溜息しか出ない。  スコアボードは、ラグビーの試合かとツッコミを入れたくなるような得点になっている。  6回表にして、24対8。エースの抜きにしてもそれでもひどい。  一体何トライ決められているんだか……。  相手は聖華(せいか)高校だった。去年の夏の県大会、ベスト8まで行った実力校だ。  とはいえ、南商(なんしょう)の通称で知られるわが南ヶ丘商業高校だって、公立ながら例年県内でシードの座を守っている公立随一の強豪校だ。それに去年の夏は聖華よりも勝ち上がりベスト4まで行った。  しかし戦局は、マリヤが声を張り上げたくなるようにかなり不利、というよりほぼ決まってしまっている。
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