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 風が吹いた。  花曇りの空から冬の名残を含んだ風が時折吹き付けてくる。市営グラウンドの1塁側観覧席に腰掛けていた。ここからだと3塁側ベンチがよく見える。 「お目当ての彼は……いませんよね~。あの、もうよくないっすか?ううー、微妙にさみぃ。こんな試合より近くのホテルにでも避難しません?僕ちん頑張っちゃいますんで」 「うぜぇ」 「おっ、そのうぜぇは、いやよいやよも、本当は挿れちゃってっていうあれっすか?」 「チッ」 「よっしゃ、今日はペガサスあたりで――」  何を勘違いしたのか、タカシがガッツポーズをしている。こいつは一度、殺しておくべきかもしれない。 「テメー、さっきっからぐぢぐぢうぜぇんだよ。大人しく黙って観てろっ」  思わず、声を荒げていた。  寂れたグラウンドに声が響き渡る。  まずい、少し冷静にならなければ。
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