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「ヒェー、こえーこえー、杏里様思いっきし素が出ちゃってますよ」  無視してグラウンドを見つめていると背後からがさつな声が降ってきた。  杏里は露骨に舌打ちした。幾多の足音が観覧席の階段を下って来る。 「タカシじゃんかよ!」    タカシは身を乗り出すようにして振り返ると形相を崩した。 「うおっ、カイトくんたちも来たのかよ。もう試合決まっちまってっけど。楽勝だぜ」  タカシがハイタッチを交わした相手は、赤やブルーグレー、殆ど白に近いアッシュ、ピンキーブラウンなど、今時そんなダサいヘアーカラーする奴いるのかよとツッコミを入れたくなるような鮮やかなガラの悪い友人たち。 「俺たちも暇だからよ、自分とこの高校の試合ぐらい観とこうと思ってな」  一番ガタイの良い赤い髪の野郎はカイト。  ガラ空きの観覧席には腰を下ろさず杏里が座っている真横の階段にどっかりと腰を下とした。自然と彼の周りに輪ができる。 「それに杏里が惚れたっていう男の顔も気になるしな」  もう一つ背後から声がした。カイトの語を引き継ぐようにして言う。その声の主は、顔を見ずとも声を聞かずとも気配だけでわかる。
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