1. 風の神様の物語(童話)

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 困った真っ赤に憂う太陽は全能の神様に事の仔細を相談しました。お願いですから人々のため地の生命のため風の神様を動かしてくださいと。  だが全能の神様も風の神様同様偏屈でした。  真っ赤に憂う太陽に大木のような野太い声でこう言いました。「願い事を叶えてほしいのならそれ相応のものと交換だ」と。  真っ赤に憂う太陽は、少し思いめぐらせてから言いました。 「ならば私をクローバーに変えてください。そうすればあの方は私のためにこの乾いた大地に雨を降らす風を吹かしてくれることでしょう」  全能の神様はそれを聞いて唸りました。「つまりはこういうことだな。永久に輝く命を捨て、儚く散るその命で良いと」 「はい。私のそれ相応のものとは、私自身の永久の命」  全能の神様は痛く感動し、彼女をクローバーに変えてやりました。しかしそれでは彼女があまりにも不憫だと思い、彼女を特別なクローバーに変えてやりました。  それは、(いつ)()のクローバーでした。  五万と溢れる三つ葉や四つ葉のクローバーでは、風の神様も彼女がどこに居るのかわからないだろうと思ったからでした。 
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