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「……はあ、わかりました」
なんだか社長が変だ。
優しいんだか、なんというか。
いつもはこんなにわたしに絡むことはないのに……。珍しいなあ。ちょっと強引な社長も悪くない。口説かれているようにも聞こえて、気分が良かった。
これは心の中の宝箱に思い出として残しておかなくては。
わたしはうれしさ半分、仕方なくうなずいた。
「ただ……」
「ただ?」
社長は右眉を器用に釣り上げた。
「わたしの仕事の分担を減らしていただきたいのです」
「どうして? やっぱりか。やっぱり、辞めるんじゃないだろうな」
「辞めません。まだ」
「じゃ、何か? 妊娠とか? け、結婚とか?」
社長は言いづらそうに聞く。
「セクハラですか? いえ、それも違います」
いきなり、妊娠? 結婚?
わたしはびっくりした。
わたしが否定すると、社長はほっとした顔になった。
「いや、セクハラではない。心配だ。ただ、おまえが心配なだけだ」
社長は慌てて言い放った。
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