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わたしが出社していたときは、こんなに書類があふれ、植物が枯れていたことはなかったはずだ。
秘書課は、相当忙しかったにちがいない。ごめんね、みんな……。
わたしは申し訳なくなった。
「じゃ、君は何をするのだ」
「秘書課を育てます」
わたしはにこりとしてビジネススマイルを浮かべた。
「ううう。それで、遅く来て、早く帰って、何をするんだ」
社長は不安そうに、そして悔しそうに言う。
社長のこんな顔、見たことがなかった。
そんなに嫌そうに言わなくても……、ちゃんと秘書として仕事はするのに。そんなに仕事が心配なんですね。
わたしはすこし呆れた。
「そうですね、普通の会社員になって、婚活でもしようかと」
「婚活だって!!」
「はい」
わたしは大まじめで社長に言った。
「婚活! 君が? こんなに仕事ができるのに?」
「生き方を改めたいのです。これからはプライベートは、恋愛と婚活、一直線にがんばります」
「いったいなにがあったんだ」
社長は驚いて目を丸くした。
社長は仕事でもそんな顔を見せたことがなかったので、驚いてしまった。
わたしが婚活して何が悪いのか。失礼だなあ。なんだかちょっとむかつくんだけど。
「社長、わたしはもう29歳なんです。人生を考えようと思うんです」
わたしはきっぱりと宣言した。
社長は頭を抱え、社長室へ消えていった。
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