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「だめだ。こいつはなしだ」
社長は突然社長室からでてきて、忠明の胸をどんと押した。
わたしの困惑をよそに、兄弟で言い合いがはじまった。
「ひどいな、どうして弟の俊介がそんなこというんだい? 自由恋愛だろう」
「そうだ、自由だ。でも忠明、お前はダメだ」
社長はプイっとそっぽを向いた。
「僕もフリー、高橋くんもフリー。大人なんだし、いいじゃないか。それにこの会社より僕の会社の方が大きいし。結婚したら、僕の家庭も支えてもらるし……、ハッピーだよ。高橋くんは、ぼくの仕事にも理解があるだろうし。夫婦助け合いができてすばらしいじゃないか。もし高橋くんが仕事を続けたいって言うならそれもできるし。うちの子育て環境はいいよ」
「け、結婚!?」
社長は素っ頓狂な声を出す。
「そうだよ、恋愛したら、次は結婚だろう。婚活って言うのはそういうことなんだよ。僕もそろそろ婚活しなきゃって思っていたし。真面目にどう?」
忠明は社長の顔を見ながらニヤニヤしている。
パクパクしている社長をほったらかしにして、忠明さまはわたしにウインクをした。
どうやら社長をからかっているらしい。
わたしは笑った。
「さて、わたくしは仕事をしたいので、忠明さまも社長も社長室へおはいりください」
忠明さまの冗談で、わたしの婚活話も明るく済んでよかった!
わたしはほっとした。
「あ、高橋さん?」
忠明さまは社長室に入る直前、わたしにささやいた。
「ぼく、本気だからね」
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