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突然、近藤は顔をわたしに近づけてきた。
わたしは今までにない距離感にとまどっていると、
「ところでさ、あの……なんか高橋さん、仕事でなにか困ったことが……」
近藤が言いかけた。
あれ? 次の言葉は? ないの?
わたしはふと威圧感を感じて、後ろを振り返った。
社長がムッとして立っている。
「おはようございます」
ホープの近藤さんは少し緊張気味にあいさつした。
「おはようございます」
わたしは社長にビジネススマイルで一礼する。
相手の機嫌が悪くとも、挨拶は笑顔が基本だ。
「うちのスーパー秘書は早いんだな。俺が何か困らせてないかって?」
社長はぼそっとつぶやいた。
うわ、近藤さんとの会話、聞いていたのね。
わたしは内心焦りながら、「とんでもございません。社長はきょうは珍しくお早いですが、何かありましたか」と聞いた。
社長は渋い顔をして、「……うん」と頷くと、エレベーターの方へ向かっていく。
わたしは近藤さんに一礼して、社長に置いて行かれないよう早足追いかけた。
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