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「あ、社長、社長のお兄様が、忠明さまがもうすぐお見えになります」 急いでいる感じの社長の様子をみて、わたしはあわてて歩きながら今日のスケジュールを確認して、社長に声をかける。 「ああ、わかった……」 社長はいつもより急いでいるようだ。 秘書室にはいると、すでに電話が鳴っていた。 営業時間は9時からだと知らないのかしらと嫌味を言いたくなったが、そこはプロである。すました声で電話をとって失礼のないようご挨拶し、社長に取り次いだ。 電話をとった社長の機嫌はますます悪そうだ。 仕事でトラブルがあったのか。 わたしはなんとなく嫌な予感がした 秘書室をノックする音がした。 忠明さまがひょいと顔をのぞかせた。 「忠明さま。ただいま社長は電話中でございまして……」 「ねえ、高橋さん? 毎朝何時にきてるの?」 「ええと、だいたい……8時前でしょうか」 忠明さんは笑った。 「秘書ってそんなに早く来なくてもいいよね?」 「はあ、まあ……」 忠明さんがわたしの顔をじっと見る。 「あのさ、もしかして……あれのこと好きなの?」 「……」 突然聞かれて、わたしは顔が赤くなった。 「な、なんてこと聞くんですか!!! 」
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