213人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
4
2週間の有給休暇か。何しようかな。ああああ。もう……、やだあ。
わたしは頭を切り替えようと努力する。
くよくよしても仕方ないんだけど……。
わたしは悪くないのだ。ミスはしていないんだから。
でも、自分に降りかかった火の粉を自分で始末できないなんて……。
あとは社長に任せるしかない。
申し訳ない気持ちでいっぱいになって、胸がキュッと痛くなった。
すいません、社長……。あとはよろしくお願いします。わたしの潔白が証明され、トラブルが解決されるのを祈るのみだ。
映画をみようか。本を読もうか。歯医者もいこうかな。旅行もいいな。
わたしは考えながら、じんわりと涙が浮かんできた。
どうしてこんな目にあわなきゃいけないんだ。
悔しくて涙が出てきた。
でも、わたしにできることはもうなかった。さっき痛くなったお腹はまだ痛かった。病院……行こうかな。
そうだ、ずっといけなかった人間ドックに行こう。
それがいい。
わたしは廊下に出て、携帯で病院に問い合わせてみたら、運よくキャンセルが明日出たらしい。
わたしはすぐに人間ドックの予約をとることができた。
幸先がいい!きっといいことがある。大丈夫。大丈夫だから。
健康をチェックして、今後のことを考えよう。
わたしは自分をギュッと抱きしめた。
……。最悪の事態になって、転職するなら、健康になっておいた方がいいだろう。
振り子のようにいい方向と悪い方向へと思考が揺れ動いてしまう。
わたしは一人になりたくて、そのまま化粧室にむかった。
化粧室に誰も人がいないことを確認して……。
わたしは取引先の糸島株式会社の担当者の顔を思い浮かべ、おもいっきり空中にパンチをした。
あの野郎、わたしのせいにしたな。書類紛失を……。絶対そうだ。そうにちがいない。く、悔しい……。
あ、あれ? なんか、肩が痛い。
ゆっくりまわしてみると、ズキッして、さらに肩の関節がきしんでいる。
なんか、痛い……。やっぱり痛い……。やだ、もう……。
さっきよりは痛くなくなったけど。地味に痛い。
いつのまにかわたしは歳をとっていたらしい。
身体も思うようの動かないのか……。
わたしはがっくりした。
仕事ばかりしていては体に毒ってことね。
この機会に、健康的になるのもいいな。
こうして、痛い肩をかばうようにして、会社から私物をいくらか持ち帰り、ようやく帰宅したのだった。
結局、薬箱にバンテリンはなく、わたしはようやく部屋の中から埋没していたのをみつけた。
右にまわしても、左に回しても、肩まわりが痛い。
泣きっ面に蜂。
あ、でも、明日は早起きしなくてよいんだ……。社長……。社長は大丈夫かな。ああ、社長に会いたい。でも、もう会えなくなるかもしれないんだ。
わたしは深夜のテレビの画面をボーッと見ていた。久しぶりの夜更かしだった。
最初のコメントを投稿しよう!