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好きだった。
あの人の事が、たまらなく好きだった。
中学や高校や大学の同級生の顔と名前を碌に覚えてもいないのに、彼と交わした会話は一言一句覚えている。
どんな表情をしていたのかだって、忘れた事がない。
好きなの。
ただただ、あの人だけに恋をしていた。
「置いてかないでよ。」
「ねぇ、独りにしないでよ。」
訃報を聞かされても信じられなくて、信じたくなくて、それでも現実を受け止め始めた胸の苦しみに目を背け続けてきた。
一番じゃなくてもいい。
二番じゃなくてももういい。
最後に彼に愛されていると言われた青いという女が心底羨ましいけれど、彼の本妻で堂々と彼を看取れてあげられたあの女性が酷く妬ましいけれど。
だけど、そんな事よりも、どんな事よりも。
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