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水原篤樹の遺書/第11~第15項
楽しかったな。
何を考えたって、何を思い出したって、楽しかったと心から思う。
ずっと続けばいいのにと柄にもない事を思ったりもしたし、ずっと続くはずなんてないと冷静に理解してもいた。
だけど、まさかこんな終わり方をするなんて、聞いていない。
「あれ…。」
宛てもなく彷徨っていた視線が留まったのは本棚だった。
少年漫画のタイトルが所狭しと並ぶそこはまるで男子高生の棚の様だ。そこで一際分厚く、異質な雰囲気を放つ本が気になった。
「こんなの、いつの間に置いたの。」
手を伸ばしてそれを引き抜けば、私とは縁のないタイプの表紙が姿を現した。
私のではないけれど、この本に見覚えはある。
あの男が、飽きもせずによく読んでいた本だった。
読み込み過ぎているせいか、表紙の素材がすっかり萎れてしまっている。年季を感じるその本をゆっくり開いた。
もくじを抜け、エピローグも過ぎ、三頁、四頁、五頁と捲っていく。
生まれて初めてと言っても良いほどにこんな本に目を落としているけれど、頁を捲る指が止まらずただただ見入ってしまっていた。
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