隣の君にさようなら

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師走の初め頃のある冬の日のこと。 本日の全ての授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。この男子高ーー星ヶ丘(ほしがおか)高等学校のチャイムは鐘のような音ではなく、電子音のチャイムだ。 生徒たちは教室を出て、それぞれ自分の行くべき場所を目指す。中にはそのまま帰宅するか寄り道する者、中には部活がある者、中には学校の自習室に残って勉強する者など様々だ。 この学校の一人の2年生の生徒ーー 倉沢 雪彦(くらさわ ゆきひこ)は本日は部活のある日ではないため、放課後は自由に過ごせる日である。今日は隣の席のクラスメイトの友人ーー汐見 翼(しおみ つばさ)と共に学校の帰りに駅前のアイスクリーム屋でアイスを食べに行く予定だった。 「ねえねえ、一緒に帰ろ! 今日はアイス食べるんだよね! 楽しみだなぁ。」 翼は無邪気に笑いながら言った。高校2年生という年頃にしては華奢で小柄で顔立ちも幼く、髪も柔らかそうで可愛らしい容姿を持つ彼だから、余計に実年齢よりも幼く見える。そんな彼を、雪彦は愛らしいと思っていた。 その姿は、一言で言うなら”天使”である。 実は雪彦、翼に片想いの恋をしているのだ。 「そうだな。行こっか。」 雪彦は微笑んでそう言った。 二人は学校を後にした。
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