隣の君にさようなら

放課後、クラスメイトや担任が雪彦に慰めの言葉をかけてくれたが、それらの言葉は雪彦には届かず、雪彦は彼らの話に耳を傾けることなく学校を飛び出した。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

しばらく走っていると、浜辺にたどり着いた。（星ヶ丘高等学校のある街は海辺の街である。）

冬の海の近くだということもあるのか人気がなく、ただ海の波の音が響いている。

”翼、今から会いに行くからな。”

そう心の中で呟けば、雪彦はローファーを脱ぎ、海に向かって駆け出した。

海水に入った瞬間、大きな水しぶきと海水の音が生じた。それも気にせず、雪彦は海の深いところを目指して駆けていく。

そして足の届かない水深のある位置まで来た数分後には、平均の高校2年生の身長を持つ華奢な身体は沈んでいった。

薄れゆく意識の中、彼は最期に思ったのだった。

”せめて来世では・・・お前（翼）と・・・。”

雪彦の身体は冬の冷たい海の深いところへと落ちていった。

地上の世界では、雪彦を飲み込んだ海が穏やかに波の音を立てていた。