エピローグ いつかの自分に、そう誓ったから

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 彼女が亡くなってから3年が過ぎた。今日は彼女の命日だ。  俺は墓を訪れた。墓石に彼女の好きだった白いユリの花を添え、彼女の冥福を祈り手を合わせる。  俺は今も、この仕事を続けている。彼女への手紙はまだ出していない。その理由は自分でもよくわからない。――でもいいんだ。俺はこの仕事にやりがいを感じているから。 「また来るよ、小百合」  俺は立ち上がる。  そして、ふと思い出した。そう言えば、先輩に声をかけられたのはここだったな――と。人目も気にせず咽び泣く見ず知らずの俺の肩を、先輩はそっと抱き締めてくれたのだ。  その時のことを思い出すと、流石にちょっと恥ずかしい。でも、今ではとても感謝している。俺にこの仕事を紹介してくれたことを。  あぁ、懐かしいな。先輩、元気にしてるかな。  俺は先輩の笑顔を思い出す。あっち側からの手紙を受け取ったときの、心から安堵した様な、あの柔らかな微笑みを――。 「さーて、仕事すっか」  俺は歩き出した。けれどそれと同時に、どこからともなく聞こえてくる男性の嗚咽。それは溢れ出す気持ちを必死に耐え忍ぶような、悲痛な泣き声だった。  思わず足を止め、ゆっくりと辺りを見回す。すると――居た。まるであの日の俺の様な、後ろ姿が。  そして気が付けば、俺はそこへ向かって歩き出していた。  ――あぁ、あの日の先輩も、今の俺と同じような気持ちだったのだろうか。もう確かめようもないことだけど――それでも、俺は……。 「――すみません、貴方に是非お伝えしたいことが」  ――後悔しない道を選ぶと、あの日の自分に誓ったから。 -完-
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