第一章 今日も俺は手紙を届ける

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 夕方事務所に戻ると、部長が俺のデスクで待ち構えていた。 「お疲れっす」  俺がぶっきらぼうに呟けば、部長は難しい顔をしながら俺のデスクに右手を置く。 「お前、クレームが来てるぞ。無理やり受け取らせたらしいじゃないか」  その言葉に、脳裏に何人かの顔が過ぎった。  さっきの婆さんか……それともその後のおっさんか?いや、昨日の主婦って可能性も――。  俺はあり過ぎる可能性に苛立ちを募らせる。 「おい、聞いてるのか」  俺を見据える鋭い瞳。その視線に、俺は今直ぐ退職願を叩きつけたい気持ちに駆られた。  けれど、まだ辞める訳にはいかない。  だから俺は必死に取り繕って、なんとか頭を下げる。 「すみませんでした」  俺の謝罪に、部長の低い声が返される。 「いつ辞めて貰っても、構わないんだぞ」 「――っ」  それは、脅しか?そう思って顔を上げれば、しかしそうでは無いようで――どういう訳か、部長の瞳が憐れむようにこちらを見下ろしていた。 「この仕事は、きついからな」 「……っ」  それだけを言い残し、部長は自分の席へと戻っていく。俺はその背中を、黙って見送ることしか出来なかった。
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