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その夜、アパートに帰宅して早々に、俺はソファに身を投げ出した。
「……疲れた」
呟いて、横目でこの部屋を見回す。
この部屋はあの日のままだ。花柄のカーテンも、彼女が使っていた目覚まし時計も、俺の知らないキャラクターのぬいぐるみも。――全部全部あの日のまま、俺は、何一つ捨てられずにいる。
君が突然俺の前から居なくなったあの日から、俺の生活は変わってしまった。君が居なくなり何も手に付かなくなった俺は――気が付けば、7年勤めていた会社に退職願を出していた。
「――小百合」
1年と1ヶ月――、彼女が居なくなったあの日から、俺が一人で過ごして来た時間。
ソファに仰向けで転がりながらテレビ横の棚の上に視線を向ければ、茶色い木枠の写真立てに、淡い色のワンピースを見に纏った彼女が映っていた。それは俺のよく知る、花の様に可憐な笑顔で――。
「……どうして、俺を置いて行ったんだ」
呟くと同時に、酷い疲労感に襲われる。――眠い。あぁ、君に会いたいよ……。あの日、俺が君の問いに応えられていれば……君は今でも、俺の隣にいてくれたのか――?
そうやって俺は今夜も、その日のことを思い出して後悔する。
それでも襲ってくる眠気に耐え切れず――いつしか俺は、夢の中へと落ちていった。
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