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「とりあえず、合格、なのかな」
おふとんに入ったわたしは、食堂で交わした契約について、ずっと考えている。NOという答えはなかった。引き受けるしかなかった。迷わず、サインをした。
葛葉から、さらに絵を描くようにお願いされた。
「しかし、今度の指定は、色鉛筆!」
絵のテーマでテンと口論になりかけたのに、色鉛筆画についての注文は一切なかった。わたしが聞いても、笑ってはぐらかすだけで、答えてくれなかった。
「葛葉さんが気に入りそうな絵……か」
どんな絵が、色が好きだろうか。どこかに飾るんだろうか。プレゼント用だろうか。床の間にある、梅の絵みたいなのが、趣味? しろうとっぽい感じがいいのかな。
二十四色の色鉛筆、どうやって使おう。紙は引き続き、狐のときに渡された画用紙。
そして今日、はじめて会った人。葛葉という女性が、ほとんどつかめていない。
生きている人間の命を取る……そんな物騒なことが、ほんとうにあるのだろうか? そもそも、そんなこと、できるのだろうか?
どう延長しても五日が限度、というのは五日後に宿泊の予約が入っているためらしい。
「また狐じゃ、工夫がないし」
明日、葛葉に密着取材しよう。それか、テンに聞いてみる。
たぶん、この依頼で葛葉が満足したら、わたしの夢は叶えてもらえる予感がする。
なんだかよく分からないけれど、葛葉とテンはわたしの名前をとても気に入ってくれている。
だからきっと、縁がある。じゅうぶん、見込みがある!
最後のチャンスだと思って、しつこく、なにがなんでも齧りついて、がんばろうっと! なるべく三日以内で。
「あ。おふろ……入り忘れちゃった……歯はみがいたから、まあいいか……眠い」
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