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3 外出。観光。もしかして、デート?
翌日。
おなかが空いて起きた。まだ眠いけれど、なにか食べたい。
ぼっさぼさの、ミディアム丈の髪をひとつにまとめてごまかし、廊下の洗面台で急いで顔を洗ってから、食堂へ向かった。
「おはよーございますー……」
「遅い。もう、九時近いぞ」
「貂! じゃない、テン! おはよう」
テンは、白エプロンの美男子の形をしている。よかった。貂もきれいな毛並みでかわいかったけれど、やっぱりヒトの姿のほうがいい(ごはんを作ってもらえるし)。
「朝食にしよう。魚を焼く」
「ありがとうございます、神さま。テンさま! できたら、ごはんを用意してもらえる間にシャワーを使いたいんだけど、いいかな? 昨日、入りそびれちゃった」
「了解した。案内する」
食堂を出て、廊下をさらに奥へ進む。とても奥行きがある。
「楓の間は、お宿の中では、手前のほうのお部屋なんだね」
客室と思われる部屋が、あとふたつ。松の間とけやきの間。渋いネーミングだ。
洗面台とトイレの先に小さなお庭を挟み、食堂と台所がある。
物置らしい戸がいくつか続いたあと、浴室があった。大きな温泉マークが染め抜かれた赤い暖簾がかかっている。
これじゃ、ホテルじゃないよ、やっぱり。民宿、か。
「タオルは、中に置いてあるのを自由に使ってくれ。使い終わったら、洗濯機の中へ」
「ありがとう」
「十分で戻ってこい。食事が冷める」
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