ドラキュラさんと私のベッドタイムストーリー

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 ドラキュラは自分の事をあまり話したがりませんでしたがやがてポツポツと話し始めました。  彼の名前はヨーク。元は人間で二百年以上生きていること。食事の血はお金のない人々から少しずつ買っていること。人から直接血は吸わないし、勿論ミリの血も吸おうとしない。そんなドラキュラでした。  ヨークと出会ってからミリは少し寝不足にはなりましたが心の持ちようは格段に変わりました。  数ヶ月後、季節は夏になりミリはここへ来て初めての誕生日を迎えました。  朝会った父親は何も言いませんでした。正妻も、兄妹もミリの誕生日を知っている事すら分かりません。  ミリはその日の夜を楽しみにしていました。 誕生日を誰かと過ごせるなんてこの家に来た半年前には考えもしなかった事です。  その日の仕事を少し早めに終え、ミリは小屋へ帰りました。ヨークのために髪をとかし、髪を結び直します。  コンコンコン、とドアが鳴りました。ミリは窓を見ました。まだ宵の口です。  ミリは走ってドアを開けました。  そこには父親が立っていました。 「お父さま、どのようなご用件で?」  父親はミリを冷たい目で見下していました。そして右手の指を二本出しました。 「お前に二つの道をやろう」  父親は続けました。 「明日、ベルル伯爵と結婚するか、修道女になるか今選べ」  ミリは言っている意味が分かりませんでした。 「急になんのことですか。それに──」  父親は杖で床を叩きました。 「口答えするな、ノロマな女め。さっさと決めろ」  ベルル伯爵の名はミリも聞いたことがありました。伯爵にはいい噂はありません。なんでもこれまで三人妻を娶りましたがいずれも結婚後、姿を見た人はいませんでした。それに大層な幼女趣味、という噂まで。ミリは口を開きました。 「……しゅ、修道女になります」  父親は鼻をふん、と鳴らしました。 「では明日の朝六時に家を出るように。この部屋を整理しておくんだぞ」  そう言ってミリの返事も聞かないで部屋を出て行きました。  呆然としたミリは床に座り込んでいました。父親が小屋を出て数分、ドアが開きました。  そこにはヨークが立っていました。
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