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This is an old story.
あるところにミリという十四になる美しい少女が居ました。ミリは誰にでも優しく接する少女でした。
ミリの母は病弱であまり働けず二人の食事はいつも具が少しのスープと近所の人からたまに貰う固いパンのみでした。
母娘の仲は良く、ミリは花を売って家計の足しにしていました。そんなミリを母親はいつも申し訳なさそうにして頭を撫でていました。
ある寒い朝、ミリが目を覚ますと母親は動かなくなっていました。
それからの事はあまり覚えていません。女の大家が一日一回、めんどくさそうにパンを持ってくる時以外は人に会いませんでした。
母親が亡くなって一ヶ月後、身なりの良い紳士が父親だと名乗り家を訪ねてきました。
未払いの家賃を払い終えるとミリの身元引受け人の大家にお金を握らせ、ミリを自分の屋敷へ連れて行きました。
そこには美しい正妻とミリより一つ上の兄、三つ下の妹が居ました。
そこでミリは初めて母親が妾であった事を知りました。
母親は生前、唯一と言ってもいいネックレスを大切にしていました。「これは貴女のお父さんがくれたのよ」と。
あまりにも愛おしそうに言うのでミリにとって父親は優しい、愛にあふれた人物だと思っていました。
けれど、実際は違いました。
父親はミリの身につけている形見のネックレスには目もくれず顎で窓の外を指しました。
「今日からあの小屋がお前の寝床だ」
それだけ言うと大広間の階段を上がって行ってしまいました。
残されたミリを正妻は汚いものを見るような目つきで見ました。
「あんたは今日からここの家政婦よ」
それからミリの新しい生活が始まりました。
朝は五時前に起きて本館の窓の掃除に始まり、床掃除、トイレ掃除。沢山ある部屋の掃除をしなければいけませんでした。
そんなミリを兄妹はクスクスと笑いながらチョコレートを食べていました。
朝は使用人用の薄い味のスープ、昼はスープとパン一切れ、夜は朝より少しだけ具の多いスープ。
ミリは惨めな気持ちになりそうになりつつ毎日仕事をこなしました。
仕事が終わり、寝る前の数時間だけがミリの自由時間でした。
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