872人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
陽太は、自室に戻った。
リュックに入れっぱなしだった財布を探り出す。
確か、その中に目当てのものが入っていたはずだ。
目的のものを探し出し、電話をかける。
その番号に電話をかけるのはとても勇気がいったし、その相手と話すのはもっと緊張したが。
それでも、何もしないではいられない。
自分にできることは全部やってみる、と決めたのだから。
電話を切って、陽太は小さく息をついた。
それから、鷹城のメッセージを既読スルーしてしまっていたことに思い当たり、慌てて電話をかける。
「陽太?My sweetie?」
鷹城の声が聞こえただけで、こんなに胸が震えて、体温が一度くらい上がる気がするのに。
それぐらい大好きな相手と愛を囁き合うことが、どうしていけないのだろうか。
「鷹城さん、スマホ、ありがとうございます」
「uh-huh…陽太、そんな可愛くお礼言うのは反則だって。今は君に触れないのに、ゴーモンみてぇだし」
本気で悶絶してそうな声で、鷹城が言うから。
陽太は小さく笑った。
「普通にお礼言っただけですってば。鷹城さんの『俺フィルター』ってやっぱり相当変ですよ?」
そんなふうに、きっと鷹城も変なフィルターかけてしまうぐらい自分に恋してくれていることが、堪らなく嬉しい。
泣きたくなるぐらいに。
「ああ、陽太は笑い声も可愛いし……マジもう、君の笑ってる顔、すげぇ見たい。俺が笑わせてる君を、ずっとずっと、永遠にでも見ていたいよ?」
俺もです、と陽太は小さく呟いた。
あまりにも小さな声だったから、鷹城には届かなかったかもしれないけれど。
俺も、貴方が俺を見て嬉しそうに笑う顔、ずっとずっと、永遠に見ていたい。
だから。
陽太は、一度ギュッと唇を噛んで、それから覚悟を決めて、口を開いた。
「鷹城さん、お願いがあります」
最初のコメントを投稿しよう!