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理央ちゃんは富士子の欲しい物を全て持っていた。
優しい両親と優しい兄弟、お家は大きい病院でお父さんはお医者様で何不自由なく育った本当のお嬢様だ。富士子の父親は会社の社長だったが富士子はお嬢様の暮らしをした事はなかった。お嬢様どころか普通の女の子の暮らしすらした事はなかった。小さな女の子の頃から両親から怒鳴られ殴られ蹴られ投げられた。富士子にとってそれは毎日の事だったから富士子は高校生の頃、自分が虐待されてる事すらわからなかった。ご飯もろくにもらえたことはなかった。
理央ちゃんは天真爛漫な性格で明るくて元気だから、いつも周りに人が集まる。ぱっちり二重の大きな目を持っていてマツゲも自然とクルンとなってる。一年間以上ずっと一緒に居て富士子は一度も嫌な思いをした事がない。本当に優しい性格で頭が良くて賢い。健康で毎日自転車で登下校していた。足も速くて運動神経も完璧だ。お化粧も何もしてないのに彼女はあるがままで美しい色彩を放っていた。こんな人が本当にいるのかとツッコミたくなるくらいの人が富士子の親友だ。
( どうして私の親友でいてくれるのか今でも良くわからないんだ。でも本当にありがたい事だという事だけはわかってる。)
一年生の時に同じクラスになって初めて喋ったのが彼女だった。入学式で富士子の靴が無くなって富士子はボロボロの靴を履いてた。でも理央ちゃんは靴の事なんて見てすらいなかった。
「 えっ、そうだったかな?ボロボロ靴に気が付かなかった。」
と、理央ちゃんは笑った。
その時から富士子と理央ちゃんは親友になった。
( なぜだかわからないけど。どれか一つでいいから理央ちゃんの持っている物を私も欲しかったな。どれでもいい。なんでもいい一つでいいのに。)
富士子は理央ちゃんの持っている物を何一つ持っていなかった。
それは確かな事だった。
( 人は皆、幸せと不幸が同じだけあるなんてウソだ。今までの人生私は全部不幸で、彼女は全部幸福みたいだ。)
って思ったんだ。
そして富士子は理央ちゃんに本当の自分の事を話せた事は一度も無いんだ。多分富士子の日常は理央ちゃんの異常であり、富士子の常識は理央ちゃんにとっては非常識であろうから富士子はいつもとても気をつけて話しをした。
だけどときどき富士子が話してる時理央ちゃんは大きな目をさらに大きくして富士子をジッと見つめる時がある。その時は富士子はドキドキして、
( 何か変な事を言っちゃったかな?どうしよう。彼女に嫌われたらどうしようか。何がおかしかったかな?
何が間違いだったかな?)
富士子の頭の中は熱くなってカーッと火照る。
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