十五夜の日の不思議な出会い

2/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「どうしたんだい?」 「え?」  そこに、唐突に凛とした声がして、僕は顔を上げた。見ると、海辺のベンチに一人で座る、何やら超イケメンのお兄さんだ。え、何で僕に声を掛ける? 「ひょっとして、君も彼女にフラれたの?」 「え、まあ。そういうお兄さんも?」 「そう。もうちょっとでベッドインってところで張っ倒されてねえ」 「――」  そう言ってははっと笑う人は、僕より十は年上だろうか。三十代くらいだ。ま、そのくらいならばさらっとベッドインと言えるか。過敏に反応してしまうのは、まだまだ高校生気分が抜けず、大学生活を漫然と過ごしている奴くらいだろう。そう、僕は彼女がいなくなったら、その先は非常に望み薄なのだった。 「酷いと思わないかい?いいって言ったのは彼女だよ。それがねえ、唐突に」 「何か、やらかしたんじゃないですか?浮気とか?」  僕のつらつらと考える思考なんて無視して話してくるイケメンに、僕は若干イラっとしつつ適当なことを言った。すると、イケメンはそうなんだよと頷く。マジか。 「そう。俺のスマホを見てさ、ここ、私と行ったことのない場所じゃないっていうわけよ。水族館なんだけどね。クラゲが有名なの。富山だったかなあ。山形だったっけ?まあ、ここから遠い場所ね。そんなところに一人で行くわけねえだろって詰め寄られて」 「実際、誰かと行ってたんですよね?」 「いや、行ったのは一人だよ。俺は基本的に単独行動。でも、現地でステキな女の子と一夜を過ごした」 「は、はあ」  まあ、この感じだったら、芸能人で言うと松坂桃李みたいな顔をした人だから、ひょいひょいと女子はついてくるだろう。別に一夜だけでもオッケーしちゃうだろう。僕だったら絶対にない。何これ、ただの自慢話か?
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!