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意識が回復した時。
最初に戻った感覚は『背中が熱い』事だった。
そしてその反対に足先はひんやりと冷たい。何ともアンバランスな状態。私は、どうなったのだろう。
腹ばいになった下に、何か硬い板のようなものがある。木の板だ。
そうか。私は投げ出された海の上で、この船板にしがみついたのか。
何処かでギィ……ギィ……と鳥の鳴くような声がしている。
……知らない鳴き声だ。カモメでもないし、ウミネコでもない。もっと低い声だ。あれだけ声が低いという事は、それだけ発声器官である声帯が長い事を意味している。……思い当たる鳥類がない。
ここは……何処なんだ?
ようやく、薄っすらと眼を開ける事が出来た。いつの間にか夜は明け、陽も高く昇っているようだ。
あの凄まじい嵐が、まるで嘘だったかのような静けさ。
……此処は、砂浜なのか。
日光に照らされた背中が、ジリジリと焼けている。……さぞかし後でヒリつくだろうな。
海岸に打ち寄せる波はとても穏やかで、僅かな白波も立ってはいない。
足先が冷たいのは、そこだけが海水に漬かっているからだ。
左右に長い砂丘が続いてるのが見える。
海と反対側の陸地は、100mほどで林があるようだ。……だが、何かが可怪しい。そう、あの木……少し、いや、相当に大きい気がする。全長で10m?いや、それどころじゃぁあるまい。ざっと見ても30mはあろうか。巨大過ぎる!
それに、樹木の種類もおかしい。
松とかではなく……シダ類の葉? シダの巨木……原生林なのか?
……これも、お目にかかった事の無い種類だ。
私は……私はいったい何処に流れ着いたというのか。
「ぐっ……」
軋んで悲鳴を上げる腕に、どうにか力を込めて上体を起こそうと試みる。
その時。
ふと、自分の目の前に『太いダークグレーの柱』が立っているのに気がついた。よく見ると、長い4本の指先に鋭い『爪』が伸びている。指間には、何やら『水かき』のようなものが。何か動物の足らしい。いや、それにしては大き過ぎる気もするが。
ゆっくりと、恐る恐る顔を上げた先に見えたものは。
「うっ……うわぁぁぁ!」
思わず悲鳴を上げる。
そこに居たのはアフリカ象よりも数倍巨大な、見た事の無い4本足の生物だった。そのサイのような3本の角を持つ恐ろしげな顔が、じっと私を見つめている。
そして次の瞬間、私は更に腰が抜けるほど驚かされた。
《……翼竜どもが騒いでるからから来てみたが……生きていたか》
その生物が喋ったのだ。
それは明らかに、人類の言葉だった。
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