ブラックアウト

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ブラックアウト

辺り一面真っ白な雪の世界。 しんしんと降り続く雪に全ての音が遮断され、この世界に自分だけしか存在していないような錯覚に陥る。 柔らかい新雪は、僕の膝までの深さがあり、歩く速度を鈍らせる。 手も足も冷え過ぎて、すでに感覚がわからない。 特に雪に埋もれた膝から下は、ズボンも靴も濡れて重く、一歩踏み出すのにも億劫になる。 ハアハアと荒い息を吐いて、額に汗を滲ませながら、ゆっくりと歩く自分に苦笑いをする。 特に行きたい目的地があるわけではない。 今歩いてるここは、初めて来た場所だ。 ただあてもなく家を出て、ただあてもなく電車を乗り継いで、フラリと降り立った名前も知らない場所。 長い時間、ひたすら歩き続けてここまで来た。 もう、いいだろうか。 もう、足を止めて、いいだろうか…。 雪が絶え間なく落ちてくる灰色の空を見上げて、誰にでもなく許しを請う。 その時、雪雲の切れ間から微かに太陽の光が射して、突然の光に目が眩んでよろめいた。 あ…と思った時にはもう遅く、僕はバランスを崩して後ろに傾き、そのまま雪の斜面を滑り落ちた。 ああ…、もっと穏やかに眠りにつきたかったのに。 そう悔やんだ瞬間、頭に強い衝撃を受けて、僕の意識は暗闇の中へと消えた。
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