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あれから、何年、何十年も経った。
俺は、50歳になっていた。
中学・高校を卒業して、大学に行き、社会人になった。
それなりの会社で、それなりに働いている。
妻と子どももいる。
職場で、家庭で、色々と揉め事もあるけれど、まあまあ満足のいく人生だ。
今日は、中学2年生の時の同窓会。
「よう、最近どうしてた?」
「いや~腰がさ…」
「娘が受験で…」
「あの頃お前さ…」
顔なじみの仲間と、近況や懐かしい話をしながら飲むのは気分がいい。
ただひとつ。
飲みながらも、あの子のことがずっと気にかかっていた。
いや、今だけじゃない。
ずっと、忘れたことはなかった。
けれどあの子―井上は、これまで一度も同窓会に来なかった。
のに、だ。
その日突然、井上は現れた。
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