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第一話: この世は美人のためにある
木曜日の午後7時、東京丸の内の商業施設内のトイレ。
オレンジ色の柔らかな光に照らされた化粧直し用のブースで、
磨き上げられた鏡をのぞきこむ一人の女がいた。
丸の内の美人OLは、
こんなところで化粧を直して
アフター6を楽しむのね。
美人でなくても丸の内勤務なら同じはずなのだが、
美津子はそのことには気づかない。
この世界は美男美女のためにあると思う。とくにこの東京っていう街は。
洒落た服を着て流行のヘアスタイルをセットし、
日々新しくなっていくショップやレストランが立ち並ぶ街並みを、
イケメンの彼氏や旦那さんなんかと歩くのだ。
(しかも、プレゼントにもらったブランドバッグなんか持って。)
そのヒロインは美女と相場が決まっている。
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