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美津子はもう、いつか私も…と夢見る歳ではない。
来月27歳になる美津子は、自分の分というものをわきまえている。
自分が「そちら側」ではないことを。
「そちら側」ではない美津子が、平日の夜にこんな東京のど真ん中で、
瞼に大きなラメのたっぷり入ったアイシャドウをのせたりなんかしている
のには理由がある。
美津子の大学時代の仲のいい友達である京子が、
丸の内に会場を借りて異業種交流会を開くというのだ。
京子は昔から起業したがっていてその手のセミナーや交流会にも
よく顔を出していたが、まさか自分で主催するようになるとは。
ともかく、記念すべき第一回目に人が少ないと恰好がつかないとのことで、
京子は美津子を始めとする大学時代の友人たちにも
サクラをお願いして回ったのだが、
その中で東京近郊に住んでおり、なんとか都合をつけられたのは
美津子だけだった。
本音を言うと、美津子はこの手の会に参加するのは気が乗らなかった。
そういう所では、場を支配するのは美男美女なのだということを、
これまでの経験から嫌というほど思い知っていたからだ。
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