第一話: この世は美人のためにある

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そういう美津子も、不細工の部類ではないという自負はあった。 あくまでも自負だが。ただ、いかんせん華がないのだ。 少し小さめの奥二重の目に、控えめなまつ毛。そして目と同じく小さな鼻。 それだけなら化粧でなんとでもなるのだが、 その鼻の下のやや厚めの唇が問題だった。 美津子は自分の唇が嫌いだ。 他のパーツと比べて主張が強すぎるのだ。 そして、顔に負けじと恋愛遍歴も華やかとは程遠い。 大学3年の時から付き合っていた同じサークルの2つ上の彼氏は 美津子の初めての相手だったが、 それも一年前に別れたきりだ。 大学院に進学した彼は優しく謙虚だった。 しかし大手の会社に内定が決まり、 働き出してからは態度ががらりと変わった。 そして、もっと外の世界を見てみたいと言って美津子に別れを告げたのだ。 先月サークルの後輩から、その彼ももうすぐ結婚しそうだと聞いた。 相手は私の2つ下らしい。 本人から送られてきたというツーショット写真を見せてもらったが、 相手は北川景子に似た目力の強い美人だった。
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