出会いは突然に

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出会いは突然に

先輩と初めて会ったのは、高校に入学したばかりの頃だった。 忘れ物を取りに音楽室へ向かうと、教室の前で誰かが話をしていた。 それは女子生徒と、小さな女の子。 どうして高校の校舎に、子供が? わたしは疑問に思った。 「うーん。申し訳ないが……」 音楽室の前で、整った顔を歪めて悩む女子生徒。 「君の言葉は、僕にはわからないんだ……」 「ブランコ! ブランコ! 乗りたいのー!」 女の子が、駄々をこねている。 側に居る女子生徒はどうしていいのかわからなくて、困っているみたい。 どうやら二人は、姉妹ではないようだ。 だとすると、女の子は迷子? 迷子なら、放っておけない。わたしは女の子に、声をかけた。 「……あのね? ここは学校だから、ブランコは無いんだよ。公園は、隣のマンションにあるから。そこで遊ぼうね?」 わたしは屈んで、女の子と目線を合わせる。 そして、ゆっくりと言い聞かせるように話した。 「その公園に、ブランコ……ある?」 女の子が泣きそうな声で聞く。 学校の隣にあるマンション。その前の道は、今朝通ったばかり。 マンションの敷地にある公園も、見かけた。 わたしは公園の遊具をひとつひとつ、思い返していく。 砂場に鉄棒。真ん中に滑り台。一番奥にあったのは……ブランコ! 「あるよ」 わたしが答えると、女の子は満面の笑みを浮かべた。 「ブランコで、遊ぶー!」 そう言うと、と楽しそうに去っていった。 道、わかるのかな?    ふと、心配になった、その時。 女の子の側に居た女子生徒に、声をかけられた。 「君、うちの部活に入らないかい?」 大きな栗色の瞳を輝かせ、優しい笑顔で女子生徒は言った。 音楽教室の前だった事。 迷子の女の子に世話を焼く、優しい人。 そんなイメージしかなくて、わたしは。 うっかり「はい」と返事をしてしまった。 その女子生徒が、我が校でも有名な変人であること。 オカルト研究部の部長などと、夢にも思わず……。
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