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何故だろう。
唐突に、このままあっさり彼女とお別れしてしまうのが惜しくなった。
純粋に、もっと彼女と会話したいと思った。
素直に、もっと彼女の事を知りたいと思った。
俺はデートのキャンセルを取り消す事にした。
「予定変更しないで、予定続行させない? 〝男〟の俺でよければだけど」
俺は、そのままの偽りのない姿と台詞で彼女をデートに誘った。
「〝女〟の私でよければ喜んで」
幸運にも、彼女からはOKの返事が貰えた。
俺が、
「舘石慧瑠」
と、本名を名乗る。
すると、彼女も、
「荻村璃海」
と、本名を教えてくれる。
今日、俺は恋愛したい相手ではなく、良き相談相手と、生涯の友人と呼びあえるであろう親友と、雑踏で賑わう街中を肩を並べて歩く。
恋人同士じゃなくても、友達同士でも、デートしたっておかしくない。
そう、きっと、絶対に、
〔 荻村璃海 〕の事を恋愛対象として見る日など永遠に訪れない。
俺は自分の心を疑う事なく、信じて、安心しきっていた。
魅力溢れる人物の前では、男だとか女だとか、性別なんて一切関係なく、好きになり、恋に落ち、溺れてゆく可能性も有り得るのだという事実に少したりとも気がついてはいなかったんだ。
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