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今、私の目の前に座る人物は、私が望むべき相手ではなかった。
だけど今、私はこうやって約束したとおり彼とデートをしている。
彼、舘石慧瑠は一人の人間としてはとても好感が持てる。
なんせ、私と彼は〝同類〟なのだから。
我慢しないで、ありのままの思想を公言出来る。
しかも、私から彼への一方通行じゃない。
ちゃんと会話のキャッチボールが成り立つ。
「ねぇ、男同士だって恋バナするでしょ? どんなお話をするの? やっぱりエロトーク? 彼女とキスしたとか、エッチしたとか、そんな話をよくするの? でも慧瑠はゲイでしょ? 皆と話し合わせるの辛くない? エロ本はどんなの読んでるの?」
あの後、慧瑠と私はファーストフードに入店した。
ファーストフードなんて全メニューを丸暗記しているくらいに、ほとんど毎日通いつめている。
でも、何故かな。
今日は、今日だけは違う。
まるで初めて入ったかのような新鮮さを体感しちゃう。
いつもより、コーラもポテトもハンバーガーも、すっごく美味しく感じるよ。
コーラの炭酸が喉の奥底でシュワっと弾けるたびに、私の心も弾んで陽気な気持ちを抑える事が出来ない。
慧瑠もハイテンションになってほしいのに、当の本人は仏頂面で眉間に皺を寄せている。
ねぇ、慧瑠。私との会話が退屈なの?
♀
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