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お互いの呼び方を特に決めた訳じゃないのに、いつの間にか慧瑠と私は『慧瑠』『璃海』と自然に呼び捨てしあう仲になっている。
慧瑠は苦笑いしつつも「ま、いっか」と言って、再び私の話を聞く姿勢に戻してくれた。
「俺も璃海と出会うまでは、こういう話しをする相手がいなかったから、璃海がはしゃぎたくなる気持ちはよく分かるよ」
「でしょ? あぁーー、説明なしに理解してもらえるって本当に幸せ。テレパシーみたいじゃない?」
「そうか? 俺からのテレパシーは璃海には伝わってないみたいだけど」
「えっ!? 嘘っ!? 慧瑠の話だってちゃんと聞くよ?」
私は慧瑠の顔を真っ直ぐに見て、強く言い張った。
そっか。そうだよね!
自分だけがペラペラ話してばかりいちゃダメだよね!
私も慧瑠の話を親身になって聞いてあげなくちゃ!
私は急に後ろめたい気持ちになったけど、それもすぐに立ち直る。
「俺、さっきからずっと璃海のハンバーガーが食べたい! って璃海にテレパシーを送っているのに、璃海、俺にハンバーガーくれないじゃん?」
「私のハンバーガー、慧瑠にあげようか?」
「うん。ちょうだい」
「やだよーー。あげないよーーっだ!」
「ケーーチ」
こんな他愛のない冗談のやりとりも、すっごく楽しくて貴重な時間だよ。
周りのお客達が次から次へと新しい顔へと入れ代わってゆく。
慧瑠と私はいつまでも席を立とうとはしない。
湧き水のように溢れ出る、途切れる事を知らない談笑に夢中になる。
この空間は誰にも邪魔させないよ!
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