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背中を覆い隠す、腰まである綿菓子のようなフワフワとした山吹色の長い髪が水玉模様のワンピースによく映えて、麻菜歌の可愛らしさを更に強調させている。
断る理由が一つも見つからない私は、この場を適当に誤魔化してやり過ごせる方法が一つも思いつかない私は、麻菜歌に慧瑠の事を紹介するしか為す術がない。
なるべく好印象を与えないように、ツンケンに ――――……。
「えっと……。友達の、慧瑠」
「慧瑠くん。初めまして。こんにちわ! 璃海の友達の倉橋麻菜歌でーす!」
「初めまして。こんにちは。ヨロシク」
慧瑠が麻菜歌に淡々とした挨拶をする。
麻菜歌とは違い、慧瑠が麻菜歌にした挨拶は素っ気ないもので私は安堵した。
「……私、ちょっとトイレに行って来る」
居たたまれなくなった私が、この場所から逃げようとすると、
「あっ! 待って! ワタシも行く!」
と、早口に言った麻菜歌が私の後を着いてくる。
トイレに行く私の背中を慧瑠からの視線が痛いくらいに突き刺さっていたのは分かっていた。
でも、私は振り返らなかった。
今、慧瑠と目を合わせたら、慧瑠に酷い事をいっぱい言ってしまいそうだったから ――――……。
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