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「舘石の知り合い? 友達? それとも恋人? やっぱり舘石は〝そっち系〟だったか」
俺と智景の間に畑野が勝手に割り込んできた。
〝そっち系〟って何だよ!?
いや、俺はそうだけど。当たっているけど。
でも智景はノーマルだ!
てか、初対面の智景に対してその挨拶は失礼だろ! フレンドリーすぎるだろ!
俺は半ば強引に畑野を追い払おうとする。
「畑野、仕事は? 商品補充、在庫確認、レジのお金計算は? 全部畑野の仕事だろ?」
「もう全部終わったよ。客が来たらレジに戻るけど、この人は客じゃなくて〝恋人〟の舘石に用があるみたいだし」
畑野が俺の嫌味にも顔色一つ変えずにケロリと答える。
相変わらず、仕事が早い。
聞くまでもなかったか。
畑野に偉そうに先輩面しても無意味だ。
お世辞ではなく、畑野の仕事ぶりは素晴らしいと思う。
ミスもしない。ミスをしたとしても、ごく稀だ。
人間の中身(性癖など)は別として、畑野のこういうところは素直に信頼している。
俺のしたミスをカバーしてくれた事もあった。
思えば、俺がミスをしでかした時、畑野だけが最後まで手伝ってくれたな。
あれには感謝している。
その後、恩義せがましく「ラーメン奢れ」と言われてラーメンを奢ったけど。
ラーメン好きだし、ラーメン自体そんな高いもんじゃないし、ラーメン上手かったし、損したとは思ってないけどさ。
あのラーメン屋で畑野の馬鹿げた明るさに俺は励まされた。
仕事も出来て、そこそこルックスも良くて、いや、そこそこというより、かなり良いか。
そして常に極上スマイルだ。
何も知らなければ女は近寄ってくるだろうな。
影で毒舌吐きまくりだけど。さすが毒グモだな。
いや、もうこの例え方はやめよう。
畑野には世話になっている部分もあるんだから。
♂
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