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「オレはここで舘石と一緒にバイトしてるんだけど、〝そっち方面〟のお相手も一緒にさせてもらっていたりもするんだな、これが」
前言撤回!!
やっぱり毒グモだ!!
俺の畑野へと表明した尊敬の糸は一分もしないうちに途切れた。
智景の目の前で畑野がふざけて俺の肩を抱き寄せてくる。
しかも馴れ馴れしく頬擦りまでしてきやがった。
そんな畑野の腕を俺は勢いよく振り払う。
懲りもせずに続ける畑野の冗談に対して、智景の反応はというと……。
「残念ですが、僕は慧瑠の友達止まりです。僕の片想いなんですよ」
心臓がドクンと飛び跳ねた。
脳天に血が溜まり、噴出しそうになる。
身体がどんどん熱くなって、顔に出したらヤバいのに、自分でも赤面していくのが分かる。
全身のあらゆる血管や細胞が暴れ回っているみたいだ。
智景のバカヤロウ。
そんな、あっさり言うなよ。
少しは戸惑って否定しろよ。
もっと迷惑そうな顔しろよ。
穏和で優しい微笑みを浮かべるなよ。
分かっている。
智景は畑野の言った冗談に合わせて冗談で返しただけだ。
俺は智景と『友達止まり』で本当に残念だよ……。
こんなふうに考えてしまうあたり、俺ってば未練タラタラだな……。
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