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6.わたしも、どこか隠れようかなっ。
「じゃーんけーん、ぽんっ」
目を開いた瞬間、わたしの目に飛び込んできた風景。
昨日も見た、真っ暗な空に、月面のような風景。辺りを見回すと、昨日よりものが増えている。そのほとんどは、何かよく分らない物の残骸。不時着したらしい、イカ型のロケットが地面にめり込んでいる。あ、中から、二足歩行のウサギが出てきた。
じゃんけんをする、ヒイとセイの二人。グーとグーであいこ。
「なんで、じゃんけんしてるの?」
私が尋ねると、二人は同時にこちらを向いた。
「あのね、おねえちゃんが来るの見えたから」
「先に、何をするのか、決めておこう、かと」
そう言ってすぐ、また向きなおりじゃんけんを再開しだした。うーん、やっぱり、わたしの意見は聞かないのかぁ……。
なかなか決着のつかない二人。置いてけぼりにされ、すこし退屈になったわたしは、寝転がり空を見上げてみた。
真っ暗な空。いくつもの星が、ワイヤーで吊られたように浮かんでいる。夢の中にも現れたイカ型のロケット。その窓から、猫らしき生物が手を振っている。わたしは、手を振り返し「こんばんはニャー」とつぶやく。イカ型のロケットに乗った猫らしき生物は、少し微笑んだ気がした。
「やったー、勝ったぁ」
どうやら、決着がついたらしい。起き上がってみると、ヒイが歓声を上げている。その横で、セイが恨めしそうにに睨みつけていた。
「おねえちゃん、かくれんぼだよっ」
かくれんぼ、懐かしいなあ。わたしも小さい頃はよく……あれ、やったことあったかな? まあ、いいや。
まだ睨み続けているセイ。さすがに二日連続はかわいそうに感じた私は、そばに駆け寄った。
「ねえ、セイはなにして遊びたかったの?」
「かけっこ」
かけっこって、走るだけ……だよね?
「えっと……ごめんね、わたしさっきまで走ってきたからさ、走るのはもう良いかな……なんて……」
我ながらなんてカッコ悪い言い訳。それでも、ヒイは小さくうなずいてくれた。
「じゃあ、最初はあたしが鬼の役するね」
そう言うと、息つく間もなく、ヒイは数をかぞえ出した。
セイも、それを分っていたのか、走って離れている。
さっきまで、泣きそうだったよね? ね?
わ、わたしも、どこか隠れようかなっ。どこが良いかな。
とりあえず走りながら、辺りを見回してみる。あの、墜落したイカ型のロケットの中は……わたしの身長の半分くらいしかないし、小さすぎてダメだ。じゃあ、月面にありそうなクレーターは……近くに来たら見つかっちゃうなあ。
クレーターの横で、マンガなどでありがちな、タコみたいな宇宙人が笑顔で手? らしき触手の一本を振っていたので、わたしも笑顔で手を振り返した。
……もう、ここでは何が起きても驚かない気がする。
とりあえず、ここでいいかなあ。
三角形のよくわからない建物の残骸の中で、壁にへばりつき、出来るだけ小さい形でしゃがむ。
目を閉じて、耳を澄ませる。
おそらく、この世界では風は吹いていない。風を感じないし、風の音も聞こえない。それ以前に、ほとんど音がない。黙ってしまうと、自分の呼吸する音、鼓動の音が聞こえてしまうくらいに静寂した世界。
足音が聞こえる。ヒイが探しに来たのかな?
速くなる鼓動の音。ああ、わたし今、ドキドキしてる。
「ねえ、セイとおねえちゃん知らない?」
……誰と話してるの? 近くにいた宇宙人さん?
「そっかぁ、知らないかぁ」
わたしからすれば、ヒイが一人で話してるようにしか聞こえない。わたしは話したことがないけれど、もしかしたら宇宙人さんたちは、何らかのコミュニケーション方法を持っていて、それで会話しているのかもしれない。
とりあえず、知らない振りしてありがとう。宇宙人さん。
また、足音が聞こえ始める。少し遠くに行ったようだ。
ふう。と一息つく。
その直後、トタトタと軽い足取りで、足音が戻ってきて、わたしを包む残骸の前で足を止める。
ば、バレてる……?
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